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第38回  紅茶と文学  報告  

課題本「献灯使」

2023/6/10@渋谷

 

-ご挨拶-

 今回は9名の方にお集まり頂き、初参加の方が2名でした。

今回の紅茶

    1. スパイスチャイ ニルギリ+キャンディ
 

■課題本「献灯使」

ノーベル文学賞候補にも挙げられる多和田葉子。前々から興味はありつつも実は一冊も読んだことがなかったので、ディストピアもの、という情報だけを頼りに課題本に選びました。SF的要素はありながらも説明の描写はほぼなく、主人公:義郎の語りで読者は状況をつかんでいくという展開です。
語り手が急に変わったり言葉選びも独特なので、読みやすいと言えない作品ですが、果たしてどういう感想を皆さんが抱くのか興味深くもありました。

■カタカナ語をカタカナ抜きで説明してみよう

この作品では外来語も自動車もインターネットも無くなった鎖国状態の日本、という設定があります。
そのアイデアを拝借して会序盤のアイスブレイクとして「カタカナ語をカタカナを使わず説明して当てるゲーム」を行いました。ボブ辞典というカードゲームの自家製バージョンです。個人的趣味で「意識高い人が使いがちな言葉」をセレクトしました。

「このアライアンスにジョインしてメンバーのウェルビーイングをライジングさせ、ファンダメンタルからのチームビルディング、アセット、リソースをファーストプライオリティにガバナンスにインベストして行くアントレプレナーシップにフルベット」というような横文字を多用するとさも凄いことを言ってる感が出る不思議。それをある意味では皮肉った(小説と同じように)ゲームでもあります。でも以下の言葉の浸透具合が微妙だったのか、不発だった感は否めず・・・でも個人的には面白かったです。

 

■「献灯使」読書会を終えて

ディストピアとして描かれる近未来日本が舞台だったので、今回は皆さんに未来予想を書いてもらいました。明るい未来を思い描いている人もいれば、ディストピアを予想する人もいる。半々で分かれたのが面白かったです。
最後に集まった本を撮影。

■開催後記

作品をどう読むかという視点においては、空海をモデルとした遣唐使、および仏教面での衆生救済を表しているのかなという感想を持ちました。現実世界でも人口減少や少子化、経済的な没落、気候変動、食糧危機など様々な問題が山積している日本。急激に発展し、急激に没落していく国、と外国からは認識されているようです。果たしてどうなることやら。

しかし、ヤバいという意味では韓国の方がヤバいです。出生率は世界断トツワーストの0.81。唯一の0点台。このままいくと日本を上回るものすごい早さで韓国は萎んで行くことになりそうです。

献灯使はかなり示唆的な内容だっただけに未来についての議論が深まるか、と思ったのですが意外にもそうなりませんでした。
高度経済成長的な価値観を持つ人、新しい時代が見えている人、自分の興味だけを追い求める人。良い悪い、ではなく様々な価値観が同時に発生している2023年はまさにカオスだと思います。

なんとなく地殻変動が起こっているような気もするし、冷笑と嘲笑がよりはびこっている気もする。サイレントマジョリティ達ものんびりしてたら手遅れになりますよ、そんな思いを抱かせてくれた作品でした。