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紅茶と読書会 第五回報告  

課題本 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

 フィリップ・K・ディック 著

2018/9/2@雑司ヶ谷

1999年 発行

~映画「ブレードランナー」とは似て非なる別の作品~

全面核戦争による放射能汚染が進み、地球外惑星への移住が進む世界。
デッカードは逃亡アンドロイドを始末し大金を得ようと奔走するが・・・

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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。

-ご挨拶-

紅茶と読書会、第5回 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のレポートです。

今回は10名の方にお集まり頂きました。

今回の紅茶

アイス煮出しミルクティー  Nilgiri CTC+ 牛乳(低温殺菌牛乳)

ホットティー(ブレンド) Nilgiri Chamraj FOP & ASSAM SFTGFOP 2nd Flush

 

■映画「ブレードランナー」の原作として有名

ハリソン・フォード主演の「ブレードランナー」と言う映画、子供の時に何度か見ていたのですが、20歳を超えてから改めて観てみると、そのビジュアルの圧倒的なすさまじさに衝撃を受けました。
1982年にこんな映像がよく作れたな、と。
「アンドロイドは電機羊の夢を見るか?」と言う難解なタイトルの原作がある事も勿論知っていたのですが、中々手に取ることもなく月日は過ぎ・・・。
別の読書会で薦められた事もあり、いざ読んでみると内容が映画と全く違うことにこれまた衝撃を受けました。
むしろ映画の方はあんなストーリーでいいのか?とすら思ってしまい、ディックが存命だったら激怒していたのではないでしょうか。

 

■「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を並べると・・・

この本の魅力は内容もさることながら、装丁がカッコいいんです。

ハヤカワから出ているこのディックのシリーズは長編は黒地背景に・・

黄(アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)

ピンク(高い城の男) 青(ユービック)オレンジ(時は乱れて)

ハヤカワのディックシリーズ 
装丁が格好良過ぎる

短編はグレー地に黒で統一されており、単純に本棚に並べておくだけでも満足できる、そんなシリーズとなっております。

ふと思いついて今回から課題本をまとめて撮影してみました。
その結果がこちら↓

IMG_6011-001

ええと、思ったよりインパクト無いですね・・・

でもこれだけ電気羊さんが集結することも無いでしょうから良しとしましょう。
カバーデザインを担当された土居宏明さん、良い仕事されています。

■火星から逃げて来た6体のアンドロイドを追う、バウンティハンター・デッカード

原作と共通する部分はこの設定のみと言っても過言ではないでしょう。
小説の中では荒廃した、とても住みたく無い様な世界が描かれていますが、映画の中では近未来と西洋、東洋が交じり合ったかっこよすぎる街の様子なのですごく行ってみたくなります。それぐらい違いがあります。

この作品ではアンドロイドは他者への共感が出来ない、という前提があります。

そして人とアンドロイドの区別を確かめる「フォークト=カンプフ検査法」と言う試験でアンドロイドか人間かを判断し、始末をしていくデッカードですが、果たしてこの検査法が絶対的なものなのか、と段々と不安を抱き始めるのです。

その疑いを持ち始めることにより、デッカードの内面が徐々に変化していく部分が小説の面白い部分なのですが、この部分の描写は映画ではほぼ無視されています。
今まで信頼していた検査法が本当に正しいものなのか、その前提が揺らぐと今まで始末してきたアンドロイドの中に、もしかしたら人間が含まれていたかしれないので、誰でも混乱するのは当然です。

■人間とアンドロイドを区別する事は出来るのか。自身の存在の「揺らぎ」を突きつけられる

この小説の要素としては、

「荒廃した地球」 「惑星に移住出来ない人間」 「マーサー教」 「アンドロイド」 「共感ボックス」 「電気仕掛けの動物」 
等々ありますが、やはり大まかなテーマとして人間とアンドロイドの差異はどこにあるのか、という事と、主人公・デッカード自身の「存在」の揺らぎが挙げられるでしょうか。

という事で後半は2グループに分かれ、

・「自身の存在に「揺らぎ」を感じることがあるか」

と言うテーマで話し合いをしていただきました。

こう言った話は普通の友達との間ではまず出来ない(やばいやつと思われる)ので、読書会ならではの非常に貴重な機会になったのではないでしょうか。ちなみに私が「いやー私自身はしょっちゅう揺らいでますよ」と話すと、「それは揺らぎ過ぎだろ!」との突っ込みを受けました・・・

少人数だと個々の発言の機会が多くなり、自然と会が盛り上がる感じだったので、今後も皆さんがいかに楽しめるかを考えて運営していこうと思った次第であります。

■最後に

SF、しかもやや古い作品と言う事もあり人が集まるか心配だったのですが、満員となったのでほっと致しました。
多少読みにくかったり残酷な部分もある作品でしたが、面白かった、読んでよかったというご意見が多かったので課題本にして良かったと感じました。
SFはクラークかブラッドベリあたりで再度取り上げようかと思います。
次回の課題本は「動物農場」なので、羊つながりではありますね、あちらは本当にどうしようもない羊たちですが・・