第11回 紅茶と読書会 報告
課題本 「ティファニーで朝食を」
トルーマン・カポーティ 著
村上春樹 訳
2019/3/6@有楽町
1900年 発行
-ご挨拶-
紅茶と読書会 第11回 「ティファニーで朝食を」のレポートです。
今回は11名の方にお集まり頂き、初参加の方が3名でした。
■最近読んだ本、興味のある本
今回は参加者の方々に最近読んだ本、読みたい本を挙げていただきました。
「菜食主義者」 ハン・ガン
「ティファニーで朝食を」 トルーマン・カポーティ
「漢方の教科書」
「エチカ」 スピノザ
「蜘蛛女のキス」 マヌエル・プイグ
「薔薇の名前」 ウンベルト・エーコ
「100年の孤独」 ガルシア・マルケス
「冷血」 トルーマン・カポーティ
「白い牙」 ジャック・ロンドン
「ブルックナー研究」 レオポルト・ノヴァーク
と今回もバラエティに富んだラインナップとなりました。
100年の孤独はいつか課題本に取り上げたいと思っています。
■あまりにも有名なティファニーで朝食を
知らない人はいないであろう、「ティファニーで朝食を」と言うタイトル。
しかし多くの場合それはオードリ・ヘプバーンが主演の映画のイメージではないでしょうか。ティファニーにとっても願っても無い広告になった事でしょうね。
映画は未見なので何とも言えないのですが、決してティファニーで牛丼を食べるという映画ではないようです。
小説も当然その通りなのですが、ヒロイン・ホリーのキャラクターや容姿はパリピのマリリン・モンローをイメージしたそうです。
今回は村上春樹訳という事で、知らない人が読めばほとんど村上作品としか思えないような、本当に春樹節で書かれています。冴えないけど主人公がなぜか華やかな人と仲が良かったりモテたりと言う構成は、村上春樹の作品にもよく見られる特徴です。
「恐るべき子供」と呼ばれたカポーティ
若くして成功をおさめ、作家でありながらもゴシップの常連であったカポーティ。
華やかな世界で話題を振りまく存在であったようです。上の写真からもその当時の雰囲気が伝わってきますね。
とはいえ小説の中身は社交界を舞台としながらも、内容は純文学的要素を大いに含み非常に多層的で深みのある小説だと感じます。
キャッチーなタイトルと映画の印象できらびやかなイメージが先行しているような気がしますが、我儘し放題で男を手玉に取ってきた女・ホリーが本音を吐き出すシーンがこの小説のハイライトでしょうか。
ここに至る流れを含め、やはり名作と言われるだけの事はある、という意見も聞かれました。
映画版だと主人公ポールはダンディなマッチョで、最後はホリーは結ばれるというハッピーエンドだそうで、小説の持つ土台とはかけ離れていますね。
カポーティ自身は同性愛者だったそうですが、小説の主人公も背が低く、やや冴えない感じでカポーティ自身を反映した人物であるように思われますし、だからこそ物語が成り立つのではないでしょうか。
■参加者の感想
参加者の方から感想を書いていただきましたので、抜粋して記載します。
・63ページの「いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ごはんを食べるときにも、この自分のままでいたいの」という台詞が印象的でした。無垢な自分でい続けることは難しいのだ、と思いました。
・ホリーの孤独やプライド、家族愛が社交界、華やかでそれでいて人間関係の希薄な社交界を通じて描かれるところがどこか定型的な印象を持った。
・ポップで軽妙なストーリー展開から抜け出て、もう少しアウトローの深い闇やホリーの内面奥深く立ち入る描写があっても面白いと思った。
ただ幼い少女が不幸な家庭環境の中で成長し、大人になってどうやって世界と渡り合っていくか、その描き方はとてもリアルで興味深かった。
・どうしても映画のヘプバーンのイメージが払拭しきれず、最後まで足かせとなりましたが、(あとがきで村上春樹もその点は嘆いていた)
冷静に考えたらホリーのキャラとヘプバーンはだいぶ違っていたように感じました。
今となっては、映画を見る前に本を読んでおきたかったなと後悔しています。
たとえば、訳者による違い(ハルキ節の特徴)や名作に共通する構造(冴えない僕と華やかな彼女)などは自分一人では中々気づかない視点なので、こういうことが読書会の醍醐味なのかなと改めて感じました。
■読書会を終えて
今回は有楽町の貸会議室で行ったのですが、駅に近すぎて電車の音がうるさく、さらに階下にある居酒屋の空気が漏れ出してくるような部屋だったので、参加者の皆様には迷惑をかけてしまい、反省しております。
課題本自体は読んで良かったと言ってもらえたので、選んで正解だったと思います。