Ashi12

第12回  紅茶と読書会 報告

課題本 「蘆刈」

 谷崎潤一郎  著

2019/5/1@雑司ヶ谷

1932年 発行

-本当はすごい谷崎潤一郎-

 

フェティシズムや性的志向に主眼を置かれることも多い谷崎潤一郎。

実は古典や漢文にも精通した相当な知識人でもあります。

今回取り上げた「蘆刈」はそのあたりのバランスが絶妙に合わさった傑作という事で

谷崎第一弾として課題本としました。

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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。

 

-ご挨拶-

 

  紅茶と読書会 第12回 「蘆刈」のレポートです。

 今回は11名の方にお集まり頂き、初参加の方が4名でした。

 今回の紅茶

  1. 緑茶チャイ

  2. ラベンダーブレンド ジンジャーブレンド アッサムTB

 

■谷崎潤一郎 第一弾

こんにちは。

いつか谷崎作品を課題本にした読書会を開催したいなぁ、と考えていたので12回目にしてようやく目的を達成することが出来ました。

長かったり内容がアレだったり、初対面同士の中では語りにくいあろう谷崎作品ですが、今回の蘆刈は幻想的な雰囲気や古典からの引用も相まって、健全に盛り上がったような気がします。

参加者の一人としてこの蘆刈をご存じではなく、そもそもタイトルが読めないという苦情も頂きましたが、頑張って読んで来ていただきました。

 

   若かりし頃の谷崎(イケメソ)

岩波だからこその良さ

 

「蘆刈」とは元々能の演目として知られたタイトルであり、小説もそのストーリーになぞった部分と、その他の古典からの引用を谷崎独自の世界観にまとめ上げた、幻想文学的な風合いが強い作品です。

奇妙な夫婦生活や三角関係、ある女性を皆で崇め奉る構造は春琴抄などと似ている分がありますね。

 

謡曲「蘆刈」 内容

 

ある貧しい夫婦が難波に住んでいたが、男は思いわずらった末に女を京へやり、宮仕えをさせる。
女はやがてその主に思われ妻として迎えられるが、女は前の夫のことが忘れられず、ある日他事にことよせて難波へ赴き、蘆刈りとなったみすぼらしい身なりの男に再会する。
男は〈君なくてあしかりけりと思ふにもいとど難波の浦ぞ住み憂き〉の歌を女に送り,逃げ出そうとする(株式会社平凡社世界大百科事典 第2版より)

 

■谷崎潤一郎へのイメージ 蘆刈読了前

谷崎作品が初めてという方もいましたが、「蘆刈」を読了前、読了後で、作家に対して持っていた印象の変化を書いていただきました。

 

「春琴抄のイメージが強い、綺麗な女性と女性に対しての主人公の想いの強さ、神聖さを連想させる作家」

「ロリコンの変態」

「マゾヒズムやフェチズム、性愛的なイメージが強い」

「変態、女狂い」

「やはり文豪と言われるだけあってただのエロ作家ではないはず」

「フェチズムを赤裸々に描くイメージ」

「痴人の愛のイメージが強く、偏った女性観を持っているイメージ」

「エロティシズムの文豪、何を表現しようとしているのか知りたい」

「フェティシズム恋愛小説のイメージ」

「へんたいなのか、へんたいなんだろう」

 

とかなりの割合が「変態」と言うキーワードで埋め尽くされています。

ここまでエロだの変態だの言われる文豪もいないでしょう・・・。

 

■谷崎潤一郎へのイメージ 蘆刈読了後

 

「綺麗と言うよりも変態性とか教養の深さを感じる人が多いのか、という感想。話の展開の面白さを意識する作品でした」

「序盤→ 重厚で風情豊か、ロリコンと思っててごめんなさい 中盤→やはり変態だ、マゾ気質あふれる気品あるヘンタイ。ヒント変態を両立する層の厚さ、教養の深さはすごいと思った。」

 

「蘆刈はとても幻想的で男女の生々しさよりも美しい描写が印象的でした。三人の歪な関係性が谷崎っぽいなと感じました」

 

「谷崎の印象は良い方向に強まった。この蘆刈を読んで日本人の奥ゆかしさ、想いの強さ、畏敬の念など美徳を美しく儚く表現している点が素晴らしい作家であると感じた」

 

「いい意味で驚かされた。紀行文と語りの部分とで構成される幻想的なつくりに引き込まれ、とても爽やかな読後感であった。個人の想像を膨らませやすい部分もこの作品の良いところである。似たようなテイストの作品を読んでみたい」

 

「風流な作風は美しく、流れるように読めた。岩波の挿絵もよく、好きな作品である。和歌には詳しくないが、歌が挟まれることにより場面が生きたと思う」

 

「自分が思っていたお下劣なイメージを恥じた。人間の欲、品性について深く考えさせられた。欲望と品性、知性が示された物語だと思った」

 

「個人的にはお祐さんと言うキャラクターが好き。憎めないかわいらしさというか、谷崎はこういう女性を描くことが上手である。会でも言ったがラストがやはり素晴らしく、こういう終わり方はいい」

 

「ヒロインはたいてい気の強い美人というだけで、女性を記号として見ているが故、読者が頭の中で谷崎的ヒロインをデザインできるので魅力的に感じるのだと理解した。

ラストの結び方がふわっと余韻があり良かった。文学として残るだけあると納得。過去と現在を行ったり来たり、視点もコロコロと変わり、まるでお遊さんに翻弄されるがのごとく、引き込まれ楽しく読めた。」

 

 

■読書会を終えて

 

やはり皆さんこの作品にはいい意味で驚かされたようです。

変態作家→美しい作品も書く人!と、評価が一変したでしょうか。一部の方はあまり変化がなかったようですが。。笑

 

こういった作品がもう少し皆に読まれていれば谷崎への評価も変わるのかな~と思います。

そもそもあと1年長く生きていればノーベル賞を取っていたはずなので、川端に代わり大文豪としてもてはやされていた事でしょう。

 

谷崎はまた取り上げたいと思うのでリクエストがあれば遠慮なく送って下さい。

 

次回の読書会は初の紹介型にしようかと思います。ただ紹介では面白くないので、「自己紹介型」と言う新しい試みで行おうと思います。