第19回 紅茶と文学 報告
課題本 「悟浄出世・悟浄歎異」
中島敦 著
2020/1/26@雑司ヶ谷
1969年 発行
■静かに熱い中島先生
33歳と言う若さで、これからと言う時に命を落とした中島敦。
もっと長く生きていたら今以上に評価の高い文豪となっていたのではないか、
と言われています。
晩年に書いたこの2編は中島作品の中でも人気があり、
悟浄の健気さに心を打たれます。
真摯に、静かに熱いんですよね・・そこが良い。
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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。
-ご挨拶-
今回は9名の方にお集まり頂き、初参加の方が6名でした。
今回のお茶
鉄観音茶
悟浄出世ブレンド ニルギリ茶葉+カモミール、レモングラス等のハーブ
■中島敦について
今回取り上げた「中島敦」。高校の教科書に載っていた「山月記」の作家としてご存じの方も多いのではないでしょうか。恥ずかしながら主催者は5年ほど前までこの作家の名前を知りませんでした(教科書に載っていなかった)。読書会である方に教えられて、何となく読んだらメチャクチャ良かったので、それまで知らなかったことを非常に悔やみました。
「山月記」は以前課題本にしたので、今回で2回目なのですが、若いときに彼の作品を読んでいたらここまで身に沁みなかったのかな、という気もします。
逆に高校生で中島作品を読んで感銘を受けていたら、その後の人生が違ったものになっていた気もしないでもありません
今回より作品をイメージした紅茶をプレゼントする事に
「悟浄出世ブレンド」
今回は初参加の方が6名と普段より初めての方が多かったのですが、皆さん楽しんで話して頂いたようで安心しました。私もたまに他の読書会に参加させて頂くのですが、初めてだとどう振舞っていいかわからない部分もありますよね。
慣れてしまってる部分も正直有るので、参加者の方がリラックスして話せるような雰囲気作りは重要だなと改めて思いました。
■悟浄的エピソード and 読書会を終えての感想等
色々と思い悩み、これも違うあれも違うと一人でぶつくさ言っている悟浄ですが、
若かりし頃には誰にもそのような時期はあると思います。
後半ではそういった悟浄的エピソードをテーマに話し合ってもらい、最後に感想を交えて書いて頂きました。
・悟浄にシンパシーを感じながら、自分も悟浄的で思い当たるところがあった。悟浄の姿勢は学ぶところがあり、ぶれない、かつ柔軟な部分がいい。
・悟浄は己を悲観しているが、傍から見れば彼は自分で言うほど無価値ではない。私は今でも悟浄出世の様な状態になるときがあるが、人と自分を比べるのは得策でないと考えるようにしている。
・自分とは何か、と言う問いに悩む悟浄の姿はまさに学生時代の自分そのものです。
・自分が基本考えない、悩まない人間なので、何かに悩む人がどう救われるのか見られて面白かった。
・自分は悟浄的な人間なので、悟空のようなエピソードはないが、理想形の一つではある。
・読んでいる最中は「悟浄悩むな、やってしまえ」と思っていたが、読書会話しているときに「自分こそが悟浄だった」と気づき愕然とした。
・知識の吸収について「広く浅く」ばかり考えていた10代。それで結局人に自慢できるものが何もなく、人を救えないではないかと思い「深く狭く」を大切にするようになった。
・悟浄的要素「思索」、悟空的要素「行動、熱情」、八戒的要素「楽しむ」、三蔵的要素「愛」が近代人へのエールとなっている作品だと感じた。
ちくま日本文学012 中島敦等
■読書会を終えて
悟浄は自分とは何かと思い悩み、そしてその苦しみを少しでも解決しようと旅立ちます。
その旅を通じて感じられる微かな希望は、皆さんの心に強く刻まれたようです。
中島敦、本当に素晴らしい作家だと思います。
その辺の指南本や自己啓発本を何冊も読むより、中島敦全集を読んだ方がいいんじゃないかと思います。
次回は3月上旬を予定しております。決まり次第アップして行きます。