第20回 紅茶と文学 報告
課題本 「よだかの星」
宮沢賢治 著
2020/4/25@オンライン
1934年 発行
新型コロナウィルスにより、今までの生活が当たり前ではなくなってしまう、
そんな事態に人類は直面しています。
自分の力ではどうしようもない厳しい環境の中、
「よだかの星」を始めとした宮沢賢治の作品が
私たちに何らかの希望やヒントを与えてくれる様な気がします。
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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。
-ご挨拶-
今回は6名の方にお集まり頂き、初参加の方が0名でした。
今回のお茶
各自用意した紅茶もしくはコーヒー
■初めてのオンライン読書会
こんにちは。
巷には新型コロナウィルスが吹き荒れ、もはやリアルな場で人々が集う事自体が難しくなっています。
そんな中で当読書会もZoomを使用しオンラインで開催してみました。
一回目と言う事でクローズで募集をかけ、人数は6名までにしましたが、結果的にはこれくらいがちょうどいいかなと思いました。
以下オンライン読書会、またはよだかの星を読んでみての感想を参加者の方から頂きました。
オンライン読書会の様子
■「よだかの星」オンライン読書会終えての感想等
オンライン読書会の感想
・オンライン読書会への参加は2回目ですが、初めての時は、話し方や聞く時の態度をどう表現すればよいかわからず、アタフタしてしまいました。今回はその時の反省を生かせたので、感想の共有に集中して参加できたと思います。
他人の解釈に影響を受けて、自分の解釈に変化が生まれる瞬間って刺激的で、満ち足りた気持ちになります。
オンラインでは、人の呼吸、視線など、身体と身体が響き合う実感はえられないとも思いました。コロナ前まで、当たり前だと思っていた読書会での体験って本当に幸せなことだったんだと気づけました。
・喋るタイミングが難しいですが、オンラインは便利ですね。次もぜひ参加したいです。うーん…でもやっぱり集まりたいかも。早く世の中が落ち着くといい。
・ときどき固まったり、音声が途切れたりすることはありましたが、それほど違和感なかったです。
読書会だと、相手の話終りを待ってから自分が話をするというパターンなので、ビデオチャットとの相性はよいんじゃないでしょうか。最後になかなか話すきっかけを掴めない人にファシリが話を振るのは、オンラインではより重要と思いました。
・話しにはいるタイミングがいつもと勝手が違いましたが、その時々のメインの人が誰というのが分かるので混乱せずに皆さんの話を聞くことが出来、ちゃんと会として成立していて良かったと思います。
・個人的には特に違和感はなく、普通に楽しめました。人数的にもちょうど。
10人超えると、全員と満遍なく意見交換するのが難しくなりそうなので今後も続けるなら1ケタぐらいの人数がいいのかなと思ってます。
よだかの星の感想
・ふと思い出す度に、読み返してきた大切な小説です。
今回の会を機に改めて読んでみて、よだかや賢治への感情移入の質が変わったことが一番の発見でした。自分の心のあり方・物事の捉え方が根本的に変わると、解釈がこんなに変わるのかと驚きです。
「よだかの星は今も燃えている」という最後の言葉を、読書会でご一緒した方のそれぞれの感じ方を聞いた後に見つめなおしてみると、ひとりひとりの心の中でよだかが燃え続けているのかな、と思いました。
・よだかの健気さに胸を打たれました。自分がよだかならもっとこうする、ああする…と考えてしまいましたが、皆さんのお話を聞いて、純粋に文章の美しさとか、宮沢賢治が言いたかった事とか、物語の向こう側にあるものに想いを馳せる(書を読む真髄)ことができました。心が洗われたようです。すごく実り多き時間でした。
・全体として絵本を読んでいるようなテンポと綺麗な情景が浮かんだドラマチックな作品だと思いました。
よだかの自分で道を拓いた姿に感動しました。
自分のコントロールできない部分で不自由な気持ちを味わう現状が、よだかの生きた世界に近しいものがあると思います。そんな中でめげずに空に羽ばたいたよだかに少しばかり感動と勇気をもらえました。
・短編の読書会、想定以上によかった。
普通の小説と違って短い分、1つ1つのシーンの解釈とか深読みができたので
皆さんの視点・考え方の違いを抜き出しやすく、個人的には結構面白かったです。
久々に宮沢賢治読みましたけど、「消去と余韻」の対比が見事だなと。
よだかも銀河鉄道も、最後は消え去るのに、読み手に得体のない余韻をずーっと残存させる感じ。
こういう世界観を作れる宮沢賢治、やっぱり天才だなと改めて実感しました。
<余談>
よだかを「Joker」と見立てながら話していくうちに
じゃあなんでJokerみたいに復讐に走らないのか?という問いから、意見が広がった気がします。
「厳しい自然界のルールだと、鷹に抗ったらすぐに殺される」 →自然の原理という観点
「宮沢賢治の不殺生主義の思想、生前の報われない作家人生の反映」 →作者の価値観・生き様という観点
「社会的な側面からではなくて、文学的にこの作品の世界観を純粋に見てみる」 →文学作品という観点
・映画を見ていてたまに思う、急展開による置いてけぼりにされた印象を初め持ちました。
しかしプロットのような短さゆえに、疑問を意識しながら読む必要があって積極的な読書になり
楽しかったです。星になるとはどういうことか?を考えていて、次のような結論に辿り着きました。
物語の中の星々は無慈悲で容赦のなく、遠い空の上で互いに離れた孤独な存在です。
よだかが、空高く昇る前に鷹のような叫び声をあげたことを鷹への変身とみれば、極限状態のなかで
よだかの性格が鷹のように無慈悲な性格に変わったとも捉えられます。
星になれた理由は、この変身にあるように思います。
そして星になるということは、孤独で自己中心的な老人みたいな人生を送ること、のように思えてきました。
ちくま日本文学012 中島敦等
■読書会を終えて
世界は一変してしまい、もはや「今まで」と同じには戻れないのかもしれません。
そんな中でこのような読書会を通じて他者との繋がりを得る事、それがいかに大事かを実感しました。
早く「通常」の読書会に戻りたいとも思いますが、「通常」とは何か、とふと考えてしまいます。本の流通が滞っていてなかなか手に入らない本も多いので、課題本に悩みますが、随時開催していきたいと思いす。